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2013/01/25 (Fri)
カホンという打楽器がある。一見ただの木箱に見えるが、叩くとスネアドラムやバスドラムのような音が出る。ドラムセットは形状も音も大きく、値段も高い上、満足に演奏できるようになるには大分練習が必要だが、それに比べ、カホンは非常にコンパクトかつ安価で、演奏する場所もあまり選ばないということで、日本でも大分普及してきている。大小さまざまな種類があるようだが、最もポピュラーなのは、上に座って演奏するタイプのものである。

4、5年ぐらい前に友人の持っていたカホンを借りて初めて演奏してみたところ、単純な作りにもかかわらず、叩き方によって実に様々な音が出て非常に面白く、また、もともとドラムをやるということもあり、さっそくマイ・カホン(写真)を買ってきて、それ以来、勉強机の前に椅子の代わりに置き、本を読んだりものを書いたりする合間にカホンを叩いている(今もカホンの上でこのブログを書いている)。というわけで、今回はカホンについて。特にカホンというこの楽器の名前について書いてみようと思う。

cajon2.jpg








Wikipedia英語版のcajónの項(http://en.wikipedia.org/wiki/Cajon)によると、カホンは18世紀末~19世紀初めにペルーの沿岸地域に住むアフリカ系の奴隷たちの間で発明されたとされているそうである。スペインの植民地だった土地で生まれた楽器ということで、カホンという名前もスペイン語に由来する。cajónとは、スペイン語で「箱」を意味するcajaに増大辞の付いた形で、「大箱」の意の語である。上記のように、確かに、見たところ少し大きい箱である。

このcajaやcajón は、語源を辿ると、ラテン語で「箱」を意味する capsa に遡る。スペイン語のcajónは増大辞の付いた形だが、ラテン語capsaに指小辞(縮小辞)が付くと capsula「小箱」となり、これはフランス語 capsule を経由して17世紀ごろ英語に入り capsule「カプセル」となっている(capsuleも英語に入った当初は「小箱」の意味だった)。

ラテン語 capsa はまた、フランス語ではpsの部分が同化により ss となった形になっており、そのノルマンディー方言の形 casse が14世紀初めごろに英語に入ってできたのが case「ケース、容器、箱」である。したがって、cajón, capsule, case の語幹はみな同じ語源ということである。

これらの語の大本にあるラテン語 capsaの cap- の部分 は、ラテン語 capere「取る、つかむ、捕らえる」の cap- と同語源で、インド・ヨーロッパ語根 *kap-「つかむ、捕まえる」に基づくものであり、したがって、capsa の原義は「(何かを)捕まえておくもの」だと言える。

英語の capture「捕らえる」もラテン語capereの過去分詞 captusから派生した動詞を借用したもので、cap- の部分は同語源である。一方、英語本来語でこれに対応するのは、have(< ゲルマン祖語 *habe- > ドイツ語 haben, オランダ語 hebben, デンマーク語 have, スウェーデン語 hafva)である。ラテン語のcapere等 がインド・ヨーロッパ語根 *kap- の形をよくとどめているのに対し、英語をはじめとするゲルマン諸語において大分形が異なっているのは、ゲルマン語に起きた音変化、グリムの法則によるものである(グリムの法則の詳細については、拙著『英語のルーツ』70-71ページを参照)。

日本ではカホンを人前で演奏する機会はまずないのだけれど、よく行くイギリスではパブなどで時々友達と一緒に演奏している。というわけで、日本にはほとんどいない音楽友達がイギリスには何人もおり、そういう人たちとの付き合いを通じて、イギリスの音楽シーンの末端を垣間見たりしていると、いろいろ面白いと思うこともある。そのうちそういうことについても書いてみたいと思っているが、今回は大分長くなったので、それはまた別の機会に。


cajon.jpg
























 
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